PMいろはカルタ ── 25年分の現場を、四十八枚に
プロジェクトの現場で25年。COBOLの時代からPL・PMまで、数えきれないほどの「順調です」が、実は何も見ていなかった場面に立ち会ってきました。
うまくいった理由より、つまずいた理由の方が、はるかによく覚えている。その払ってきた授業料を、誰かがまた同じ額を払わなくて済むように、一行ずつに絞って残すことにしました。
形は「いろはかるた」。四十八の音、それぞれで始まる教訓を一枚ずつ。「い」から「京」まで、Xで一日一枚ずつ公開してきたものを、この記事に一組としてまとめます。
なぜ、カルタなのか
制約が、言葉を洗練させるからです。
「その音で始めなければならない」という縛りがあると、当たり前の正論は書けなくなる。削って、選んで、残った一行だけが札になる。PMBOKの引き写しではなく、現場で本当に効いた言葉だけが生き残りました。
四十八枚

【い】一番こわい「順調です」は、たいてい何も見ていない
【ろ】ロードマップは、迷った時に立ち返るためにある。飾るためではない
【は】早い「できます」より、正直な「ここが読めません」
【に】二度同じ質問が出たら、それは人ではなく仕組みの欠陥
【ほ】報告は、悪い知らせほど早く
【へ】平気な顔をした遅延が、いちばん手遅れになる
【と】「とりあえず会議」の”とりあえず”が、時間を溶かす
【ち】「ちょっといいですか」を断らない人のところに、情報は集まる
【り】理想の計画より、崩れても直せる計画
【ぬ】抜け漏れは、優秀な人ほど「言わなくても分かる」で起きる
【る】ルールは守れる数だけ作る。守れない規約は、無いのと同じ
【を】惜しんで仕事を抱え込むと、人は育たず、自分が潰れる
【わ】「分かりました」の多くは、まだ分かっていない
【か】課題は、見える化した時点で半分終わっている
【よ】余白のない計画は、想定外がひとつ来ただけで崩れる
【た】頼み方が雑な依頼は、雑な成果になって返ってくる
【れ】連絡は、しすぎる後悔より、しなさすぎる後悔の方が深い
【そ】「そんなの常識」と思った時、たいてい共有を怠っている
【つ】伝えたつもりの九割は、伝わっていない前提で動く
【ね】根回しは、会議が始まる前に終わっている
【な】流れを止めているのは、たいてい一番上の決裁待ち
【ら】楽な見積もりは、あとで利子をつけて返ってくる
【む】無理な納期に頷くのは、誠実ではなく、ただの先送り
【う】「うまくいっている」時ほど、足元を一度だけ疑う
【ゐ】居残り前提の計画は、計画ではなく願望 ※旧かな
【の】残すべきは議事録より、決まったことと、決めた理由
【お】終わらせ方を決めずに始めた仕事は、だらだらと終わらない
【く】詳しく聞くほど、見積もりは正直になる
【や】やり直しの多くは、最初の三十分の認識合わせをサボった代償
【ま】任せたなら口は出さない。だが責任は手放さない
【け】計画は変わる前提で、変わらない軸を持つ
【ふ】振り返りのない速さは、同じ失敗を速く繰り返すだけ
【こ】困っている人は「困っている」と言わない。様子で気づくしかない
【え】偉い人の一声より、現場の小さな違和感を信じる
【て】丁寧な確認ひとつが、後の徹夜を何度も消す
【あ】「あとで」やる、の”あとで”はたいてい来ない
【さ】最初に決めるのは進め方ではなく、何をもって「完了」とするか
【き】期限のないタスクは、永遠に着手されない
【ゆ】譲れない一線を決めておくと、たいていのことは譲れる
【め】目的を見失った会議は、長引くほど何も決まらない
【み】見えていない作業は、無いことにされ、最後に爆発する
【し】仕様の「言った言わない」は、書いていない方が負ける
【ゑ】縁の下の働きを見つけて言葉にするのも、PMの仕事 ※旧かな
【ひ】ひとりで抱えた進捗は、倒れた瞬間にゼロになる
【も】揉めごとの九割は、事実ではなく解釈のずれ
【せ】責めるべきは人ではなく、それを許した仕組み
【す】スコープは、黙っていれば必ず膨らむ
【京】混沌に、軸をつくる。── それが、この一組のはじまりの一枚
この中から、いま特に効くと思う三枚
【に】二度同じ質問が出たら、それは人ではなく仕組みの欠陥
属人化を「その人の問題」で片づける前に、仕組みを疑う。同じ問いが繰り返されるのは、答えがどこにも置かれていないサインです。
【む】無理な納期に頷くのは、誠実ではなく、ただの先送り
その場の空気を守って頷いた結果、失うのは後の信頼です。言いにくい「読めません」を早く出せる人が、結局いちばん信頼される。
【せ】責めるべきは人ではなく、それを許した仕組み
犯人探しは、再発防止の最大の敵。人を責めれば、次から人は隠すようになる。仕組みを直せば、次からその失敗は起きない。
おわりに
四十八枚を並べて改めて思うのは、PMの技術の多くは「早く、正直に、隠さず」に集約されるということでした。ツールでもフレームワークでもなく、悪い知らせをどれだけ早くテーブルに載せられるか。それがプロジェクトの生死を分けます。
混沌に、軸をつくる。── それが、この一組を貫く一本です。
一枚でも、あなたの現場のどこかに刺されば。

コメント